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JOURNAL

CONTEXT TOKYO店主伊藤憲彦の「今着たいアウター」———ZIGGY CHEN /再構築テーラードジャケット&JAN JAN VAN ESSCHE/ヤクウールのアイヌカラーコート

CONTEXT TOKYO

冬将軍が到来し、いよいよ全国的に冬を感じられる季節になってきました。あまりあちこち出かけるような世情ではないものの、体を温めるとともに、気持ちも盛り上げてくれるアウターが欲しくなってきた、という人も多いのではないでしょうか。

今回はCONTEXT TOKYOの店主伊藤憲彦に、今年の冬におすすめしたいアウターについて語ってもらいました。「アウターは欲しいけれど、いまいち決め手に欠けていて買いたいものが見つからない」という方はぜひご参考ください。

ZIGGY CHEN /再構築テーラードジャケット

まずは中国・上海のブランドZIGGY CHENのジャケットからご紹介したいと思います。ジャケットの上部がヴァージンウール、下部がヴァージンウールとコットン、そしてメタルを組み合わせた生地を使っているジャケットです。

__なぜこちらのアイテムを選んだのですか?

今季のコンセプト「ブレンディング」を象徴とする1着だと思うからです。テーラードジャケットは西洋で培われてきたノウハウがぎっしり詰まった、いわば「完成の象徴」です。ZIGGYは今季、それを一度分解して、自由に色々な要素を混ぜ合わせた1着として表現し直しています。

__どんなところに「分解」と「ブレンディング」が現れているのでしょうか?

分解という点では、ジャケットを切り裂いたかのようにあちこちから裏地が現れていたり、前身頃の胸ポケットの袋が出ていたり、というところですね。完成されたものを破壊する。これは、ZIGGYらしいパンク精神の見せ方だと思います。

ただこれは本当に切り裂いているのではなく、あくまで「切り裂いた風」として見せています。この見せ方にするには途方もない手間と技術が必要なのですが、ZIGGYはそのあたりを良い意味であまり考えないタイプのデザイナーだと感じています(笑)。

ブレンディングについては、シルエットに現れています。このジャケットは前から見るとテーラードジャケットとして作られているのですが、後ろから見ると切り裂かれた部分が雨よけのように働きかけていて、スイングトップのように見えてくる。いろんな生地・カテゴリーが混ざりあっているんです。

__着てみるとわかりますが、見た目のハードさとは裏腹に、着心地はとても柔らかいんですね。

今季はそれが強く意識されていると感じます。オシャレは我慢とはよく言いますが、やはり着心地がいいのが一番じゃないですか(笑)。

着ていてリラックスできるものじゃないと長続きしない。その点、ZIGGYはうまいです。20AWの多くのアイテムにヴァージンウールがブレンドされているのは、着心地を追求した結果だと感じています。

このジャケットの下部にはメタルの入った生地を使うことで、まるでビンテージの生地のようなシワが出やすくなっているのですが、メインの素材であるヴァージンウールはとても柔らかく、軽く、暖かい、品のある素材です。だからデザインはアバンギャルドでも、着心地はしっかりキープされています。

__ZIGGYのアイテムはどれもノスタルジーを感じる一方で、新鮮さも感じます。このジャケットで言えば、ヴァージンウールは昔からある素材ですが、そこにメタルを織り交ぜた生地を使うことで新しさが表現されているように思います。

そうですね。服好きとしてはつい昔ながらのモノに共感とロマンを感じてしまいますが、ZIGGYはその点に敬意を払いながら、今だからこそできるモノづくりがあることを提示してくれている印象です。前を向けよ、と。

__このZIGGYのブレンディングというコンセプトは、昨今トレンドの再構築とは別物なのでしょうか?

別物だと思います。トレンドの再構築は初期VETEMENTSが生み出した、自由なレイヤードスタイルの流れを汲んでいるように思います。街を歩く人々を見ていると、昔に比べてレイヤードの自由度が本当に高くなりました。かつてはあった、硬いルールのようなものが薄れてきているというか。

そうしたトレンドがデザインに落とし込まれた時に、例えば「ジャケットはこういうデザイン」という既成概念が取り払われ、色々な時代の色々な素材が組み合わせられた再構築ファッションが生まれたのではないか。私はそう感じています。

__それに対してZIGGYのブレンディングは違う?

彼のブランディングは、単にファッションだけでなく、建築物、家具、庭園といったより広いジャンルの美しいものを、自由に取り込んでいるイメージです。もちろんZIGGYもファッションの自由さは意識していると思います。

20AWのルックでもラップスカートを腰に巻いたり、重ねたり、楽しんでいた印象がありますから。でも、やはり彼の視点や思考はファッションの枠を超えているように思いますね。

__contextとしては、このジャケットをどのようなコーディネートで提案したいと思いますか?

せっかくブレンディングというテーマを設けているので、その人にあった自由な組み合わせをしていただければと思います。

全身をZIGGYで合わせてももちろんカッコいいのですが、例えば私は、DRIS VAN NOTTENのスラックスに枯れた雰囲気のミリタリーのシャツを合わせるのが好きです。

ブランドだったりジャンルだったり、型にこだわらずに「好き」をブレンディングして、自分らしいスタイリングを楽しんで欲しいですね。

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JAN JAN VAN ESSCHE/ヤクウールのアイヌカラーコート

__続いて選ばれたのが、ヤンヤンヴァンエシュのヤクウールのコートですね。少し触れるだけでも「これは絶対に着心地がいい」と確信させてくれる1着です。

そうですね。ヤクはチベットやパキスタンの寒い地域、あとはネパールにも生息しているウシ科の動物です。山の上に住んでいるので毛足が長いのですが、外側の硬い毛のなかに、産毛のような細かい綿毛が生えていて、体温を保っています。

__その毛を刈って作ったのがこのコートの生地?

厳密に言うと違います。冬が終わり、夏を迎えるために毛が生え変わる時期に刈り取り、産毛の部分だけを櫛(くし)ですいて使っています。

なので一頭のヤクから100gほどしかとれないそうです。どうしても希少性が高い繊維なので高価なのですが、そのぶん軽くて柔らかく、暖かいのが特徴です。

__その点では、先ほど紹介したZIGGYのジャケットと似ているんですね。

はい。しかし別の見方をすると、このコートと先ほどのジャケットは対極にあるとも考えられます。

__どういうことでしょうか?

パンキッシュなルックスが特徴のZIGGYのジャケットに対し、JJVEのコートは全ての点において「優しい」んです。素材自体も動物に無理をさせずに慎重に作ったものですが、私は「ヤクの産毛で作った衣服」という点が、ある意味で着る人を守護するお守りのようなものだと感じています。

というのもヤクはチベットではとても特別な動物として扱われていて、頭の骨=勇気の象徴とみなされています。お肉を食べることもありますが、決まって特別なお祝い事のときだけ。このような動物の毛で作った衣服には、何か神秘的なものが宿るような気がしませんか?

__大切に作られたものだからこそ、その思いや力が宿るようなイメージですね。

加えてJJVEの衣服は着る人にも優しいんです。洋服はいろんなパーツからできていますが、私はこれには大きく2つの理由があると考えています。一つは生地を無駄なく使うため。もう一つはパーツによって作業を分担し、生産効率を高めるためです。

__言ってみれば、作る側の理屈なわけですね。

はい。着る人にとっては関係ないんです。むしろ生地を縫い合わせるほど、生地が二重になるので固くなり、着心地は落ちてしまいます。これに比べてJJVEは、なるべく縫い目を少なくして生地をそのまま使うパターンを採用しています。だから彼らの服はリラックスして着られるわけです。

__理屈だけ聞けば、単純な話のようにも思いますが、難しいのでしょうか?

西洋のブランドにはなかなかできないことだと思いますよ。東洋的な発想ですから。

__どうしてですか?

西洋の美意識の概念は、キリスト教的な美しさにあると思うからです。人間とは神が創った神の似姿ですから、洋服は人の体のラインを活かした、シルエットを際立たせるものが多いんです。

一方で仏教に代表される東洋の思想は魂の自由を重んじています。だから締め付けなどがない、生地をまとうような衣服が生まれるわけです。

例えばこのコートなら、一番服の重みが集中する肩の部分に縫い目をなくして着心地を軽くするのと同時に、老若男女問わずフィットするワイドでありながらルーズではないサイジングにしています。

__どんなコーディネートに合いますか?

何にでも合わせられるのも、このコートの魅力です。確かにアイヌ襟や着物のようなパターンなどJJVEらしさは盛り込まれています。

でもハリのあるヴァージンウールのコートと比べると初めから柔らかくて体のラインに馴染む生地ですし、アイヌ襟もいわゆるショールカラーに近い形なので、とても合わせやすくなっています。光沢感のある生地が上品な、美しいコートですよ。

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__寒くなるのは少し憂鬱ですが、こうしたアイテムがあると身も心も温かくなりそうですね。

そうですね。どちらのアウターも見て、触って、着てみてこそ、魅力が感じられるアイテムです。ぜひ店頭に見にいらしてください。

聞き手/鈴木 直人(ライター)
語り手/伊藤 憲彦(CONTEXT TOKYO)