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「ZIGGY CHENの21SS」のメッセージと“ある変化”について

「ZIGGY CHENの21SS」のメッセージと“ある変化”について
引用元:ZIGGY CHEN YouTube公式チャンネル

まだまだ寒い日が続きますが、2月に入れば本格的に21SSの入荷がスタートします。実際に手にとって見ていただくまでにはもう少しお時間がかかりますが、そろそろ各ブランドの春夏シーズンがどうなっているのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、V.O.Fの主軸ブランドの一つであるZIGGY CHENの21SSについて、バイイングを担当した乙景店主・中村憲一に、シーズンテーマである“Collagemory”や、ZIGGY CHENに見られた“ある変化”について話してもらいました。

ZIGGY CHEN 21SS「Collagemory」のインスピレーションとは?

__まずは今季のZIGGY CHENのテーマについて教えてください。

21SSコレクションは「Collagemory」と名付けられています。おそらく「Collage(コラージュ)」と「Memory(メモリー)」を組みわせた造語なのではないでしょうか。

ハンナ・ヘッヒ(Hannah Höch)という、ドイツ・ベルリンの芸術家のコラージュ技法を用いた作品群と、インドのガンジス河畔の街「バラナシ」を旅した際にZiggy自身が撮影した写真がインスピレーションの源になったそうです。

__バラナシと言えばインド最大の聖地ですが、ハンナ・ヘッヒというのは?

今回のコレクションで私も初めて知りました。19世紀末に生まれたダダイスト(※)の一人のようですね。

※ダダイズムは既成の社会に対して「否定」「攻撃」「破壊」といった思想を持つ、20世紀初頭に起きた芸術運動。第一次世界大戦の衝撃と、そこから来る絶望感を根底に抱えた運動とされていいる。日本でも中原中也や坂口安吾、宮沢賢治が影響を受けた。(参考:Wikipedia

__ハンナ・ヘッヒはどのような作品を?

油彩、フォトモンタージュで、動物や人体を解体して入れ替え・置き換えして見せる作品のようです。ZIGGY CHENのクリエイションもまさにそれです。尋常ではないほどの「切る、縫う、切る、縫う」の連続で形にしていく。そこがハンナ・ヘッヒの表現と共鳴したのではないでしょうか。

__Ziggyはどうしてダダイズムから影響を受けたのでしょうか?

80年代の中国は「無」でした、と彼が語っていました。その時代から今に至るまで、彼の中で闘争は続いているのではないでしょうか。重要なテーマなので、彼から直接聞きたいところですね。

かの国では、公に読むことができる活字と言えば政府発行の壁新聞くらいのもので、海外の古典文学ですら禁止されていたそうです。何らかの対価と引き換えに、陰で本の貸し借りが行われていたとか。

次の日返さなければならない本を、二人一組になって、一人が朗読、一人が書写をする。やがて日が落ち、月光の下で眠い目をこすりながら……。何かの本でそんな描写がありました。

私は、その光景をとてもロマンティックに感じました。隣人がゆえに、そう思うのです。

__今回のコレクションからは、「ファッションを通じた自由への挑戦」のようなムードが出ている気がします。

Ziggyのクリエイションはこれまでにもそういった反骨精神が表れていましたが、今回のコレクションはよりメッセージ性が強いように感じました。

コラージュという手法は、強い視覚効果で笑いや皮肉の感情をもたらします。しかし、一歩間違えると危険な雰囲気になる。そういう意味でもこれは挑戦ですね。

__彼のような文化背景を持っているデザイナーが、こうしたテーマでコレクションを創ると説得力があります。

様々な変化の只中にある中国・上海を拠点に服作りをしているデザイナーがやるからこそ、でしょうね。私たちが想像できないほどダイレクトに「強い力」を感じているのではないでしょうか。

「来季のZIGGYはパンツに焦点を当てている」21SSで感じた“ある変化”

__Ziggyは毎回ものすごい種類の服を作りますが、今回は一段とデザインの幅が広いように感じます。

ZIGGY CHENのスタッフに聞いたことがあるのですが、誰にもZiggyの創作欲を止められないらしいですよ(笑)。毎回膨大な数のサンプルを作るんだとか。

服を作るのが面白くて仕方ないんだと思います。起きている間はクリエイションのことばかり考えてるんじゃないでしょうか。

__テーマであるコラージュは今までのコレクションでも使ってきた技法ですが、今回のコラージュは今までにないほどパワフルな見せ方をしていますよね。

それは私も感じました。もう我慢していない。21SSコレクションムービーもそのように打ち出していましたね。服を見せるというよりも、コラージュで構築された不思議な世界を見せたいようでした。

そういう意味でも過去最高に振り切っているコレクションだと思います。……と、毎回言っている気がします(笑)。でも、そう思わせるほど彼は毎回過去のコレクションを大胆に更新していくデザイナーなんです。

__そんな中で、中村さんが注目しているのはどこですか?

パンツです。来季のZIGGY CHENはつい強力なメッセージ性に目が行きますが、じっくり見るとまたひとつ上の段階へ移行しているように感じました。その要因がパンツの進化だと私は思っています。

__今までのパンツとは違うのですか?

はい。あくまで私個人の感想ですが、今までのZIGGY CHENはコートやジャケットからシルエットを作っているという印象でした。肩があって、そこから下に向かって組み立てていく。するとパンツは上から来た流れを調整する役になります。

__確かに、ZIGGY CHENと言えばコートのイメージがあります。

それが来季の21SSでは、パンツに焦点を当てて、しっかりと作り込んでいる印象を受けました。バリエーションも多くギミックも凝っていますし、何よりシルエットが良い。

__パンツが届くのが楽しみですね。

シャツやジャケット、コートはもちろんですが、21SSのパンツにはぜひ注目しておいて欲しいですね。時節柄、展示会が中止され、実物を見れていない状態でのバイイングだったので、それほど数は多くはありませんが、V.O.Fでも色々とご用意しています。ぜひ、ご期待ください。

聞き手/鈴木 直人(ライター)
語り手/中村 憲一(京都・乙景)