VISION

V.O.F発のブランド「ZIIIN」とは?ブランドに込めた想いと、立ち上げまでの経緯

V.O.Fでは、20SSシーズンから京都・乙景店主の中村憲一をデザイナーとするブランド「ZIIIN」をローンチ。東京・context、京都・乙景、大阪・dollarのV.O.F各店で取り扱いを始めました。

中村は長年アパレル業界に身を置き、JAN JAN VAN ESSCHEやZIGGY CHENを積極的に紹介してきた販売員であり、バイヤーです。今回はその彼が自分のブランドに込めた思いや、どのような経緯でブランドを立ち上げるに至ったのかについて、中村本人に語ってもらいました。

「もっと日本人に似合うファッションを」ZIIINのコンセプトについて

__ZIIINのコンセプトを一言で表すと、どんな表現になりますか?

アジア人、特に日本人に似合うファッションを改めて創造し直したかった、というのが一番ですね。パリに買い付けに行くたびにその思いは強くなっていきました。

__日本人に似合うファッションというのは?

日本を含む、東洋の文脈を踏まえたシルエットを持つファッションです。西洋の衣服は『テルマエロマエ』で描かれているようなローマ時代のカーテンを纏うような衣服から始まっています。

これが徐々に人体に沿って立体的に洋服を創り出すようになり、現代のようなトルソーにピン打ちをしながら洋服を仕立てる技術が確立していきました。これは西洋人の体つきが立体的であるからではないかと思います。

__一方で、東洋人の多くは体が薄く西洋人と比較すれば平面的な体をしていますよね。

はい。そのため西洋のように、立体的な服作りをする必要はなく、織って作った布をそのまま羽織るというのが自然な流れだったではないかと私は推測しています。

したがって、体に沿って仕立てていないからこそ生まれる余白、この余白のあるシルエットが、日本人を含むアジア人には似合うと考えています。

__東洋の衣服の歴史を踏まえて作られたものが、日本人やアジア人には似合うということですね。

あくまで私の推測ではありますが、そうなのではないかと思います。洋の東西で絵画表現や太陽の光の質が違うように、その国、その街に生活をする人にしっくりくる衣服のシルエットがあると思うのです。

しかし、ファッションは時代を映す鏡です。私の考えるZIIINは、和服を復刻すると言うよりは、日本人が以前着ていた着物のシルエットを、今の時代の空気を吹き込んだ衣服を通じて提案したいと考えています。

着物は年齢を重ねた人ほど板について、格好良く見えることがありますよね。ZIIINもそうした日本の大人を格好良く見せる服にしたいのです。

ZIIINの衣服を作るうえで大切にしている4つの要素

__ZIIINの衣服を作るうえで大切にしていることはありますか?

大きく4つあります。シルエット、色と素材、あとは価格です。

__一つずつお伺いしてもいいでしょうか?

はい。シルエットは先ほど言った通りその国、その街から生まれるシルエットです。次は色ですね。ZIIINではアースカラー、自然に存在する色を基調にしています。

__確かに20AWは深いブラウンやスモーキーなグリーン、レンガなど、優しい色合いのアイテムが多いですよね。どうしてこうした色使いを?

街の景色と人を自然に調和させたいんです。柔らかい色を着ると心も優しくなりますし。もちろん、黒も好きです。基本の色であり、格好良さもありますからね。しかし、フォーマルな色であり、緊張の色でもあるため、ZIIINでは締めとしての画竜点睛の色です。

また、黒は日本のファッションシーンを切り拓いた尊敬すべき先達の色、という意味で日本においては特別な色です。その聖域を冒してまで私がやるべき色ではないと思っています。

__素材についてはどのようなこだわりがあるのですか?

全てを天然素材で作っています。ボタンは水牛、紐留めは革で作っています。ジッパー類の金具は一切使いません。唯一、縫製糸のみ強度と耐久性を高めるためにポリエステルを使用しています。メインとなるファブリックでは素材のタッチ感をとても大切にしています。

__タッチ感にこだわるのはなぜですか?

JAN JAN VAN ESSCHEの思想の影響を大いに受けている部分もあるのですが、肌が喜ぶ衣服を作りたいからです。私は肌がもともと敏感で、化学繊維を着るとすぐに痒くなってしまうんです。

だから自分が作る衣服は、絶対にそういうことがないように、シンプルに気持ちよく、着ていることを意識させない服にしたいんです。肌と衣服の境界が曖昧になっていくようなイメージです。

__最後の価格へのこだわりについて聞かせてください。

嘘のない、適正な価格設定をすることです。私はデザイナーの役割を、服を作ることだけに限定していません。制作から流通、販売に至るまでをシンプルにデザインすることも仕事の領域に含まれていると考えています。品質に妥協せず、かつ手に取りやすい価格にしたいんです。

__衣服のデザインはそれだけでもかなり大変な仕事だと思います。流通や販売に仕事の領域を広げてまで価格にこだわるのはなぜですか?

ZIIINに関わる全ての人———すなわちZIIINを選んでくださるファンの方々はもちろんのこと、職人の方々、販売する私たちみんなが納得したうえで、買っていただいたり、作っていただいたり、販売して欲しいからです。

高額だから良い服とは限りません。そもそも、私自身がショップの販売員から始まって、経営とバイヤーの経験をしてきているので、そう考えるのは自然なことです。多くの失敗の経験も含めてデザインに生かしたいのです。

ですから全ての販売価格は、明確な根拠をもとに設定しています。不純物は入れない。それにより多くの方へ知られ、愛されたいと思っています。

「イメージを形にしてくれる人たちがいたからこそ」ZIIINが誕生するまでについて

__自分のブランドを立ち上げる、というのは大きな決断だと思います。どのようなきっかけでZIIINを始めようと思ったのでしょうか?

ことの起こりは地元盛岡でお店をやっていた頃に、”K”というシャツブランドを始めたことにあります。”K”は自分にとって、ものづくりのレッスンのブランドでした。テーラー職人の友人Mくんに一から教わりながら。

__どういうことでしょうか?

改めて服についてじっくり考えるための実験場のようなイメージです。バイヤー、販売、経営、それでもいっぱいいっぱいなのですけど、じっくり腰を据えて服のことを今一度勉強したかったんです。

__長年服に関わる仕事をしてきたのにもかかわらず、ですか?

お恥ずかしい話なのですが、アパレルをやってはいるけど、実際服については何にも知らないよなあと思ったんですよね。ZIGGY CHENのデザイナーのジギー、彼と私は歳もほぼ同い年です。

50に差し掛かった年齢にもかかわらず、彼の表現は若々しくて力強い。彼には見えない地道な努力と勉強があるはずなんです。でも彼は話すといつも謙虚な姿勢で日々勉強だと言うんです。Kをスタートさせるにあたっては、その言葉が大きかったです。

__そこでシャツを選んだ理由は?

シャツが基本だと考えたからです。それで、ブロードコットンという定番の素材を使って、襟やヨーク、カフスの形、着丈や袖丈、ボタンなどのディテールの意味を一つ一つ学び直していったんです。

すると、どのデザインにも意味があることがわかった。例えばラウンドカフスというカフスの種類がありますが、筆を持ち何かを書くときに袖が邪魔にならないように丸くなっていることに気がつきました。

__単に見た目のためにそういう形をしているわけではなかった。

まぁ、当然なのですけど、形には意味はあるのだな、と思いましたね。

そうやってひとつひとつ学びを得てはシャツを作って、お客様に語りながら買っていただいて、ということを繰り返していくうちに「自分でも作れるんだ」という自信を持ち始めました。そうなるとパンツ、ジャケットなどトータルで作りたくなりますよね(笑)。

__色気が出ちゃう(笑)。

でも、なんのツテもないのでそこから先は誰に何を頼めば自分のイメージを服にできるかわからないんです。

__アイデアはあっても、形にできる人との出会いがなかった。

はい。私はこれまで服作りを専門に学んできたわけではないので、素材を作ったり、パターンを引いたり、縫製をしたりといったことはできません。私ができるのは自分の中のイメージを伝えることだけです。だから服を作るためには、力を貸してくれる人がどうしても必要でした。

__ZIIINを始めるにあたって、その問題はどのように解決したのですか?

とある出会いがあったのです。京都に来てすぐの頃、まずはカットソーを作ろうと思って京都の生地問屋さんに相談に伺いました。

そうしたら、ある問屋さんが「生地はうちで出せますけど、作るのはねえ……。中村さんと合いそうな人がいるから紹介しますよ」と言ってくれて。それが今一緒にZIIINの服を作ってくれているHさんだった。

ところが実際にHさんに会っていろいろと話していると、「この人とならカットソーどころか、あれもこれも作れるぞ」ということになったんです。

__自分のイメージを形にしてくれる人に出会えたからこそ、ようやくZIIINが実現したんですね。

はい。「ああ、やっとこういう人に出会えた!」と思いましたね。関西に来てHさんに出会えたのは幸運なことだと思っています。Hさんや、実際に服を作ってくれる職人さんたちがいなければ、今のZIIINはあり得ません。

Kの土台を作ってくれたシャツ職人のIさんとも引き続き良好な関係で一緒にものづくりをしていますしね。私は本当に良い人たちとの縁に恵まれています。彼らには感謝してもしきれませんね。

※ZIIINのクリエーションの源や、中村が衣服に込めた想いについては、後編となる「ZIIIN」デザイナーインタビュー ものづくりの源と衣服に込める想いとは?にてご紹介しています。ぜひ合わせてご覧ください。(12/28更新予定)

※ZIIINの販売ページはこちら
※ZIIINのInstagramアカウントはこちら

聞き手/鈴木 直人(ライター)
語り手/中村 憲一(京都・乙景)