VISION

「ZIIIN」デザイナーインタビュー ものづくりの源と衣服に込める想いとは?

V.O.Fでは、20SSシーズンから京都・乙景店主の中村憲一をデザイナーとするブランド「ZIIIN」をローンチ。東京・context、京都・乙景、大阪・dollarのV.O.F各店で取り扱いを始めました。

前編では、ZIIINのブランドコンセプトや、立ち上げに至った経緯についてご紹介しました。後編となる今回は、ZIIINのクリエーションの源や、中村が衣服に込めた想いについて、引き続きデザイナー本人に語ってもらいました。

クリエーションの源は「本、思想、宗教———時代の流れを乗り越えてきたもの」

__ZIIINのインスピレーションは、どのようなところから得ていますか?

本や思想、宗教———時代の流れを乗り越えてきたものですね。

__本はどういったものを読みますか?

バイイングテーマの記事でも話しましたが、色々な分野の本を呼んでいます。学術書も読めば、文学も読みますし、漫画も読みます。現代のものも読みますが、インスピレーションを得るのは古典作品が多いですね。

__思想や宗教というのは?

神社仏閣、ヨーロッパに行ったときなどには教会にも足を運びます。ああいった場所には、何百年、場合によっては何千年もの人の思いや願いが込められているので、その場にいるだけで色々なことを感じます。

仏像を眺めるのも好きですね。仏像などの信仰の対象は、これまで脈々とその時代の数え切れないほどの人に見つめられ、拝まれてきています。

職人の手によって、魂を込めて作られているわけですから、それだけでも単なるモノ以上の力がこもっていると思いますが、そうやって長年、人々の思いを受け止めているうちに、より強い不思議な力が宿っているように感じるのです。

__長い年月を経た道具などに宿ると言われる、付喪神(つくもがみ)のような。

同じようなことを、アムステルダムでゴッホの『ひまわり』を見たときにも思いました。絵画の領域を超えた、神秘的な力を持つ「なにか」になっているとさえ感じました。

思えばあの絵が名作として注目されるようになって数十年もの間、途方もない数の瞳に見つめられている。不思議な力が宿っていてもおかしくないのかもしれません。

そうした人の願いが形になり祈りが込められたれたもの、作品を取り巻く気配。ものを超えた「なにか」になったものから、インスピレーションを感じます。

「ZIIINの服は、誰かに見せるためじゃなく、自分のために着て欲しい」

__ZIIINの服は、どんな人に届けたいですか?

自分の生活を大切にして、自分の美意識を持っている成熟した大人や、そうした大人になりたい人に着て欲しいですね。美しい器や、丁寧に作られた食事、寛げる住まい、”ZIIIN”はそれらと同列にありたいと思っています。

__着る服が美意識や感性を高めてくれるというのはどういうことでしょうか?

私は美意識とは自分の内側にある美しさを感じる心、感じようとする気持ちだと考えています。太陽の光、水面の輝き、吹き抜ける風、木々の揺らぎ、海の匂い……私たちを取り巻く自然を美しいと思う心です。

それを感じる感覚を高めるためには、内面と向き合う必要があります。そのためには五感への刺激の量を減らし、情報の質を高めるべきだと思います。

ZIIINの衣服は天然素材や東洋的な切り口によって、「着る」にまつわる余計な刺激——ノイズと言ってもいいでしょう——を取り除き、自分の内面に目を向けてもらえるように作っているつもりです。

__それが先ほどの余白のあるシルエット、優しい色あい、肌触りのいい素材、そして嘘のない価格につながってくる。

その通りです。ZIIINの衣服が着る人の美意識や感性を高めてくれる、というのはそういった意味です。

__SNSやマスメディアで情報過多になった結果、本当のことが何なのかわからなくなるのと同じでしょうか?

そうですね。私たちの毎日は、メディアから発信される大量の情報にさらされています。もちろん今の時代を生きるからこそ得られる恩恵です。

しかし一歩間違えれば、情報に翻弄され、体も心も疲れてしまいます。だから受けとる情報の質と量を理解して、自分で自分の精神を守らなくてはいけないと感じいて。

__具体的にどのようなときにそう感じますか?

SNSでたくさんのいいね!やフォロワーをもらっている人などを見ると「自分も何かしなきゃ!」という焦燥感に駆られてしまいますね。もちろん、それが好きでモチベーションになっている人もいると思います。

でも、私はそうなると疲れてしまうんですよね。むしろ「何もしない」という心の余白をできる限り作りたいと思っています。

__ファッションは一般的に誰かのためにするもの、誰かに見せるためのものというイメージがありますが、ZIIINは違うのですね。

ZIIINの服は、自分のために着て欲しいですね。くりかえしになりますが、「何もしない」という心の余白を作るために。

そういったファッションへの姿勢が、体と心の安息を作り、そばにいる大切なひとへ優しさとなって響くはずです。もし誰かのためにファッションをするのだとしたら、その大切な人じゃないでしょうか。

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聞き手/鈴木 直人(ライター)
語り手/中村 憲一(京都・乙景)